いのちをいただく⑤

④から続きます
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そしてもう一つは、
内田産婦人科医院の
内田美智子先生が書いた、

「いのちをいただく」

という絵本のもとになったお話です。

この絵本、ぜひともご購入いただいてクラスの子どもたちやご自分のお子さんに読み聞かせてあげてほしい、
そんな願いを込めてご紹介しますね。

http://shop.nishinippon.co.jp/asp/ItemFile/10000238.html

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坂本さんは、食肉加工センターに勤めています。

(中略)

ある日、一日の仕事を終えた坂本さんが事務所で休んでいると、一台のトラックが食肉加工センターの門をくぐってきました。

荷台には、明日、殺される予定の牛が積まれていました。

坂本さんが
「明日の牛ばいねぇ…」
と思って見ていると、助手席から十歳くらいの女の子が飛び降りてきました。

そして、そのままトラックの荷台に上がっていきました。

坂本さんは
「危なかねぇ…」
と思って見ていましたが、しばらくたっても降りてこないので、心配になってトラックに近づいてみました。

すると、女の子が牛に話しかけている声が聞こえてきました。

「みいちゃん、ごめんねぇ。 みいちゃん、ごめんねぇ…」

「みいちゃんが肉にならんとお正月が来んて、じいちゃんの言わすけん、みいちゃんば売らんとみんなが暮らせんけん。 ごめんねぇ。 みいちゃん、ごめんねぇ…」

そう言いながら、一生懸命に牛のお腹をさすっていました。

坂本さんは
「見なきゃよかった」
と思いました。

トラックの運転席から女の子のおじいちゃんが降りてきて、坂本さんに頭を下げました。

「坂本さん、 みいちゃんは、 この子と一緒に育ちました。
 だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。
 ばってん、みいちゃんば売らんと、この子にお年玉も、クリスマスプレゼントも買ってやれんとです。
 明日は、どうぞ、よろしくお願いします」

坂本さんは、
「この仕事はやめよう。もうできん」
と思いました。

(中略)

牛舎に入ると、みいちゃんは、他の牛がするように角を下げて、坂本さんを威嚇するようなポーズをとりました。

坂本さんは迷いましたが、そっと手を出すと、
最初は威嚇していたみいちゃんも、しだいに坂本さんの手をくんくんと嗅ぐようになりました。

坂本さんが、
「みいちゃん、ごめんよう。みいちゃんが肉にならんと、みんなが困るけん。ごめんよう…」

と言うと、みいちゃんは、坂本さんに首をこすり付けてきました。

(中略)

牛を殺し解体する、その時が来ました。

坂本さんが、
「じっとしとけよ、
 みいちゃんじっとしとけよ」

と言うと、みいちゃんは、ちょっとも動きませんでした。

その時、みいちゃんの大きな目から涙がこぼれ落ちてきました。

坂本さんは、牛が泣くのを初めて見ました。

(後略)

出典:「いのちをいただく」
   内田美智子・諸江和美 著
   西日本新聞社

⑥に続く…!